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ISO 45001

ISO 45001の重要なポイント

ISO45001の最大の特長:安全文化の促進を要求

ISO45001の大きな特長の一つは安全文化に焦点を当てていることです。

例えば航空機事故が起きた場合を考えてみましょう。その原因として考えられるのは、パイロットの操縦ミス(不安全行動)や機体の整備不良(不安全状態)となりますが、これは事故の根本的原因ではありません。
イギリスの心理学者でヒューマンエラーの研究で名高いジェームス・リーズン博士は著書「組織事故」において次のとおり述べています;

不安全行動、不安全状態は、労働災害の原因ではなく、様々な原因により発生した“結果” である。不適切な設計、監督不備、メンテナンス不良、ずさんな手順書、教育訓練不足、工具や保護具の不良などの原因が“病原体”のように長い間存在し、それがある時、管理の穴が重なって発生(顕在化)する。

私達は、不安全行動や不安全状態のみにとらわれず、その背景にあるマネジメント、さらに大きな影響を及ぼす組織の安全文化に着目する必要があるのです。

ISO45001では、次のとおり文化(安全文化)が頻出します;

序文(0.3 成功のための要因)
b) トップマネジメントは、OHSMSの意図した成果を支える組織の文化を形成し、主導し、促進すること
リーダーシップ及びコミットメント(5.1)
トップマネジメントはリーダーシップ・コミットメントを実証する;
j) OHSMSの意図した成果を支える組織の文化を形成し、主導し、かつ、促進する
危険源の特定(6.1.2.1)
危険源の特定プロセスは、次を考慮する;
a) 作業の編成の仕方、社会的要因、リーダーシップ及び組織の文化
継続的改善(10.3)
b) OHSMSを支える文化を促進する
附属書A(参考)
A.4.1 組織の状況の理解
b) 次のような、内部の課題:
 7)組織の文化
A.5.1 リーダーシップ及びコミットメント
組織のOHSMSを支える文化は、トップマネジメントによって概ね決定されるものであり、OHSMSに対するコミットメント、並びにOHSMSのスタイル及び習熟度を決定する個人及びグループの価値観、姿勢、管理の慣習、認識、力量及び活動パターンの産物である。その文化は、働く人の活発な参加、相互の信頼に基づく協力とコミュニケーション、OHS機会の検出への積極的な関与によるOHSMSの重要性に対する共通の認識、及び予防・保護処置の有効性への自信を特徴とするが、これらに限定されない。
A.6.1 リスク及び機会への取組み
-要求事項を超えてOHSに関わる力量を広げること、又は働く人がインシデントを遅滞なく報告するよう奨励すること等により、労働安全衛生文化を改善する

ISO45001の重要なテーマの一つとして安全文化の促進があると考えていただきたいと願います。

ISO45001の構成

ISO45001の構成

ISO45001は、ISO9001やISO14001と同様に附属書SL(上位構造基準:HLS、共通テキスト、共通用語・定義)が採用されています。上位構造基準(HLS)に基づくISO45001の構成は図のとおりです。
OHSAS18001とは次の違いがあります。

  • 経営層のリーダーシップ・コミットメントが重視されている
  • 附属書SLより「リスク及び機会」という考え方が導入され、OHSリスク、OHS機会、OHSMSリスク、OHSMS機会が織り込まれている。
  • 「予防処置」の要求がなくなっている(OHSMS自体が予防処置)

なお、従来はOHSAS18001のガイドラインOHSAS18002が存在しましたが、現時点ではガイドライン規格の発行の予定はありません。

ISO45001要求事項の概要

箇条 要求事項の要旨
4.組織の状況
4.1 組織及びその状況の理解 「OHSMSの意図した成果」に関連する組織外及び組織内の課題を決定する。
4.2 働く人及びその他の利害関係者のニーズ及び期待の理解 組織で働く人および利害関係者が、どのようなニーズ及び期待を持っているかを決定する。その中で組織が必ず守るべきことを決定する。
4.3 OHSMSの適用範囲の決定 箇条4.1、箇条4.2を考慮して、OHSMSの適用範囲を決定する。
4.4 OHSMS ISO45001に従って、OHSMSを構築・運用する。
5 リーダーシップ及び働く人の参加
5.1 リーダーシップ及びコミットメント トップマネジメントがリーダーシップとコミットメントを実証(demonstrate)する。実証には、安全文化の促進が含まれる。
5.2 OHS方針 トップマネジメントは、5つのコミットメントを含むOHS方針を策定する。その方針を働く人に伝達する。
5.3 組織の役割、責任及び権限 トップマネジメントは、OHSMSに関連する役割、責任及び権限を割り当て、組織内に伝達する。働く人はその責を負う。
5.4 働く人の意見聴取及び参加 働く人の意見聴取(consultaion)と参加のプロセスを構築・運用する。
6 計画
6.1リスク及び機会への取組み
6.1.1一般 リスク及び機会を決定する。リスクには、「OHSリスク」と「その他のリスク」(以下、「OHSMSリスク」)が、機会には「OHS機会」と「その他の機会」(以下、「OHSMS機会」)がある。
6.1.2 危険源の特定並びにリスク及び機会の評価 「危険源」を継続的(ongoing)に先を見越して(proactive、事前に)特定するプロセスを構築・運用する。
6.1.2.1 危険源の特定
6.1.2.2 OHSリスク及びOHSMSに対するその他のリスクの評価 「OHSリスク」および「OHSMSリスク」の評価のプロセスを構築・運用する。
6.1.2.3 OHS機会及びOHSMSに対するその他の機会の評価 「OHS機会」および「OHSMS機会」の評価のプロセスを構築・運用する。
6.1.3 法的要求事項及びその他の要求事項の決定 適用可能な法的要求事項及びその他の要求事項(以下、「法令等要求事項」)を決定し、アクセス可能とするプロセスを構築・運用する。
6.1.4 取組みの計画策定 「OHSリスク」、「OHSMSリスク」、「OHS機会」、「OHSMS機会」、「法令等要求事項」および「緊急事態への対応」をどのように管理するか計画する。
6.2 OHS目標及びそれを達成するための計画策定
6.2.1 OHS目標 OHS方針と整合したOHS目標を設定する。
6.2.2 OHS目標を達成するための計画策定 OHS目標を達成するための計画を策定する。
7 支援
7.1 資源 OHSMSに必要な資源を決定し、提供する。
7.2 力量 OHSMSに関して必要な「力量」(能力、適性)を決定し、力量を備える処置をする。
7.3 認識 働く人にOHS方針、OHS目標、危険源、OHSリスクなどを認識させる。
7.4 コミュニケーション
7.4.1 一般 内部及び外部のコミュニケーションのプロセスを構築する。その際には法令等要求事項も考慮する。
7.4.2 内部コミュニケーション 階層、機能間で内部コミュニケーションを行う。
7.4.3 外部コミュニケーション 法令等要求事項を含む外部コミュニケーションを行う。
7.5 文書化した情報
7.5.1 一般 ISO45001の要求および組織が必要とした「文書化した情報」(文書及び記録)を作成する。
7.5.2 作成及び更新 文書化した情報を承認し、識別する。
7.5.3 文書化した情報の管理 文書化した情報を利用可能で、保護されるよう管理する。外部からの文書化した情報を識別し、管理する。
8 運用
8.1 運用の計画及び管理
8.1.1 一般 OHSMSの要求事項を満たし、箇条6で決定した取組みに必要なプロセスを構築・運用する。
8.1.2 危険源の除去及びOHSリスクの低減 危険源の除去>代替>工学的対策>管理的対策>個人用保護具の管理策の優先順位で、危険源除去及びOHSリスク低減のプロセスを構築・運用する。
8.1.3 変更の管理 計画的変更の実施・管理のためのプロセスを構築する。意図しない変更によって生じた結果をレビューし、有害な影響を軽減する。
8.1.4 調達
8.1.4.1一般 調達を管理するプロセスを構築・運用する。
8.1.4.2請負者 請負者に関連するOHSリスクを評価し、管理するためのプロセスを請負者と調整する。請負者とその働く人がOHSMSの要求事項を満たすことを確実にする。請負者選定基準を定める。
8.1.4.3外部委託 アウトソース(外部委託)した機能・プロセスが管理されていることを確実にする。
8.2 緊急事態への準備及び対応 潜在的な緊急事態への準備及び対応のプロセスを構築・運用する。計画的対応を構築し、教育訓練を提供し、定期的にテスト・訓練する。
9 パフォーマンス評価
9.1 モニタリング、測定、分析及びパフォーマンス評価
9.1.1 一般 モニタリング、測定、分析、パフォーマンス評価のためのプロセスを構築・運用する。その対象は、法令等要求事項の充足度、危険源やリスク及び機会の活動・運用、OHS目標達成の進捗、運用・管理策の有効性である。また、OHSMSの有効性を判断する。
9.1.2 順守評価 法令等要求事項の順守評価のプロセスを構築・運用する
9.2 内部監査
9.2.1 一般 OHSMSに関して、適合性及び有効性を確認するため内部監査を実施する。
9.2.2 内部監査プログラム 監査プログラムを計画・構築・運用する。
9.3 マネジメントレビュー トップマネジメントは、OHSMSの適切性、妥当性、有効性のために、マネジメントレビューを実施する。
10 改善
10.1 一般 OHSMSの意図した成果を達成するために、改善の機会を決定する。
10.2 インシデント、不適合及び是正処置 インシデント及び不適合を決定し管理するためのプロセスを構築・運用する。
10.3 継続的改善 OHSMSの適切性、妥当性、有効性を継続的に改善する。

注意:弊社独自の和訳および解釈です。(著作権上の制約や日本語版の誤訳を考慮)

例1:consultation of non-managerial worker 「非管理職との協議」は誤訳(ofでwithではない)で、「非管理職の意見聴取」

例2:プロセスの確立、実施、維持は、プロセスの構築・運用としています。

ISO45001構築のポイント

弊社はこれまでにEHSマネジメントやOHSAS18001・ISO14001認証取得を数多く支援して参りました。また、弊社代表はISO審査経験も豊富に有しています。それらの経験からISO45001構築のポイントは次のとおりだと考えています

  • 現状のOHSMSの実態と有効性を確実に把握することが不可欠である(ギャップ分析を推奨)
  • リスクアセスメントを過剰にする必要はない(特にOHS機会、OHSMSリスク、OHSMS機会はほどほどで良い。リスクアセスメントの目的は「対話の場」を作ること)
  • 労働安全衛生法を理解し、コンプライアンスを確実にする必要がある
  • リスク管理策のプログラムが必要である(例:保護具管理、非定常作業管理など)
  • 全員参加を促す千載一遇のチャンスであると考えるべきである

ISO45001担当者に必要なこと

喫緊に必要なスキル

送検理由に学ぶ安衛法の理解

前述のポイントの中でも、労働安全衛生法を確実に理解し、コンプライアンスを確実にすることは不可欠です。そのためには、条文のみを覚えるのではなく現場のリスクに適用させて考えることが必要となります。例えば、「作業主任者」は選任しただけでは十分ではありません。交代勤務の場合は全直をカバーし、法令で求められている役割(例:作業内容を決定し労働者を指揮すること)を果たさせなければなりません。実際に役割を果たしていないことによる多くの送検事例があります。
拙著「送検理由に学ぶ安衛法の理解」を参照されることをお薦めします。

出版社:労働調査会/定価:1,650円(税込)
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取り組む上での注意点

ISO45001に基づくマネジメントシステムの構築と認証取得を最短距離で達成するためのポイントは次のとおりです

  • ギャップ分析(コンプライアンス監査を含む)を実施すること
  • 有効なメンバーを揃えた構築チームを編成すること(経営層を巻き込むことも不可欠)
  • 安全衛生委員会を最大限活用し、二重構造にならないように留意すること
  • ISO45001の附属書Aを熟読して規格を十分に理解すること
  • 現場のパフォーマンス向上に注力すること

そして、経験豊富な社外専門家の支援を受けることも目標達成の近道となります。お気軽にご相談ください。

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